NAIKA MC v.s. KEN THE 390
戦極MC BATTLE 第13章 FINAL NAIKA MC v.s. KEN THE 390
今回は戦極13章から決勝戦を紹介します。
いよいよ決勝です。客を巻き込んで盛り上げていく戦い方がうまかった二人が勝ち残りました。それにしてもNAIKAは本当に戦極に強いですねー。
それではバトルの模様をご覧ください。
[NAIKA MC]
約何年たったろう?
あの頃から企んでた
東京よりやや北 田舎の街から
俺にも絶対できるだろう
そう思ってきたHipHop
Yo 地方B-Boyの意地を張るぜ
ここにしかねぇモノを探しに来た
KEN THE 39 俺の受け取って
[KEN THE 390]
確かに地方 かもしれねぇが
俺の東京の町田も大差はねぇんだよ
このインターネット時代
どこに住んでるか
どこでやってるか
年がいくつだ
そんなもんは全部関係ねぇんだよ
Rapができんのか できねぇのか
それを証明してるヤツだけが上がってくんだよ
色々あるだろ? そりゃ俺だって色々あるよ
でもrapでメシ食って自分の家の近くで
しっかり一人立ちしてこい
[NAIKA MC]
東京にいるヤツだから言える
台詞を吐いても響かねぇな
田舎がどんな状況か
一番知ってんじゃねぇの?
色々ある じゃあ色々一個一個言ってみろよ
それで全て片付けられるほど甘くはねぇぜ
レペゼンアンダーグラウンド
売れねぇオッサン
けれども今夜はゴールドマイク
[KEN THE 390]
残酷だけどハッキリ言ってやるよ
地方だとか言い訳になっちまう時だってあるんだよ
30越えたら東京だろうが 地方だろうが
HipHopでメシ食うのは大変なんだよ
それでもな 一つ一つ組み上げて
自分のやり方を見つけて
折れねぇ芯でブレないようにぶつかって
やってくだけだろ?
俺は地方だからオマエは東京だからとかいう
disは聞きたくねぇんだよ
[NAIKA MC]
わかった じゃあ認める
アンタも確かに生きてる
DreamBoy 夢をつくってる
俺もDream boyかもしれねぇが
今夜ならNAIKA MC
a.k.a ドリームメイカー 夢作ってやるぜ
HipHopだからこそ
リアルHopHopってなんなんすか?
KENさん 教えてくれよ
俺にとっちゃこのマイクと
全員の目が合うこの瞬間が一番のリアルだ
[KEN THE 390]
リアルHipHopなんて
難しいいことはわかんねぇが
自分曲げないだけなんじゃないか?
子どもができたって
仕事があったって
明日何があったって
Rapでメシ食ってくって決めたんだったらさ
やればいいだけじゃねぇか
ジイちゃんになったって
チャンスが回ってくる順番は色々人それぞれあるんだよ
だけどな 来た時に掴めるような準備
準備が出来てるかそれが全てだと思ってるよ
[NAIKA MC]
じゃあできてるぜ 心の準備
アンタとない俺らの注意
堂々の決勝 夢の決勝
あくまでコイツを罵倒で殺生
戦極の MCさ
今夜は何があっても譲らねぇ
ハァ 大丈夫です
安心してください 勝ちますよ
[KEN THE 390]
スタミナ切れじゃねぇか
ハァハァ息切らすMCどこで見たことあんだよ
決勝戦だぞ? そんなもんじゃ全然足りねぇよ
そんなもんは関係ないんだって
やってんのは俺とオマエ二人だけ
東京渋谷そんなもんもどうだっていい
O-EAST 客なんて見えなくなるくらいに
集中して オマエに向かって
オマエの言葉を聞いて
言葉吐くだけだ
概要
8小節4本
ビート: OZRO SAURUS / AREA AREA
勝者: なし(再延長へ)
解説
戦極MC BATTLE 第13章 FINAL NAIKA MC v.s. KEN THE 390
今回は戦極13章から決勝戦を紹介します。13章の決勝はこの組み合わせとなりました。
NAIKA MC 対 KEN THE 390、ありそうでなかった、そんな組み合わせなんではないかと思います。
この大会、両者はオーディエンスを意識して試合の流れを掴むのが本当にうまかったです。
純粋なrapスキルだけで見ると強豪といえるMCが多数出場していたものの、ジワジワと流れを引き寄せる戦い方をして最後には完全に「自分の戦い」にもっていくというそんな戦い方をしていた両者でした。
ただしキャリアからいくとベテラン同士と言えるマッチアップになりますが、KEN THE 390の方はプロップスと戦術の巧さがライミング等のrapスキルを補って余りある働きをしていたように思います。とにかく試合の流れを自分の方へ倒すのが上手い。
そして試合内容ですが、NAIKA MC、1バース目の歌い出しはビートからのサンプリングで、2小節くらい丸々AREA AREAの引用を絡めています。とっさに横浜を群馬に歌い替えた「東京よりやや北」の辺りなどはニヤッとなりますね。
そしてそんな流れからバトルは地方MCの、ひいては地方生活者の苦境といった話題になっていき、KEN THE 390は「このインターネット時代にどこでやってるかなんて関係ねぇんだよ」とアンサー。
専業ミュージシャンとして東京で活動している分、NAIKAとは対照的な境遇と言えますが、そんな二人の主張がぶつかっていきます。
続くNAIKAからのアンサーが中々奮っていました。「東京にいるヤツだから言える台詞を吐いても響かねぇな」これには共感した地方在住の方も多かったのではないでしょうか。個人的には非常に鋭いラインだったと思います。
地方は東京と比較して何にせよ機会が圧倒的に限定されてしまう状況もあるので「”色々ある”だけで片付けられるほど甘くはない」と、そうした内容に言及したNAIKAのラインの方がよりリアリスティックに聞こえます。
内容だけに限ってみれば、この時点ではややNAIKAが優位に立っていたんではないかと思います。
しかしそれに対するKENからのアンサー。「地方だとか言い訳になっちまう時だってあるんだよ」にも一定の真実味があるのも確かで、このやりとりは聞き手がそれぞれどういった状況にあるかによっても、どちらに共感できるかが分かれそうな内容ですね。果たしてオーディエンスはどちらを支持するのか。
そして後半3バース目に入って、NAIKAから「リアルHopHopってなんなんすか?」というラインが提示されますが、その流れで出た「俺にとっちゃこのマイクと全員の目が合うこの瞬間が一番のリアルだ」というラインがインパクトがあり大変かっこよかったです。
こうした心の奥底に溜まっいたものがrapに乗ってつい出てきてしまう、みたいな場面はMCバトルの一つの魅力であり醍醐味ではないかと思いますが、NAIKAはたまにこういうのがあるから面白いです。実際のところどうかは本人だけが知るところでしょうが、個人的には非常に喰らいました。かっこよかったです。
一方のKEN THE 390、上述の疑問に対して「リアルHipHopなんて難しいいことはわかんねぇが」と前置きした上で、「自分曲げないだけなんじゃないか?」と即答でサラッとアンサーしますが、この辺りの切り返しの身軽さや、迷いの無い感じはさすがだと思います。
熱がこもって伝わるのはNAIKAですが、サラリと本質的な回答でカウンターを決めたのはKENの方だったという印象です。
「チャンスが回ってくる順番は色々人それぞれ」だけどその時に「準備が出来てるかそれが全てだと思ってるよ」と、微妙に人生論めいた中々深い話になっていきました。
続くNAIKAのラストバース。「じゃあできてるぜ 心の準備」からビートに完全に合わせたrapで、前半4小節は内容的にも結構完璧なラインが続きます。NAIKAの強さの片鱗が詰まったバースではないでしょうか。
しかし後半の4小節でトーンダウンしてしまい、最後息切れする場面も見せてしまいました。何試合もこなした末の決勝戦8×4本。さすがにハードですね。見てる方にも伝わってきます。
そしてそのスキをKENにきっちり拾われ、「ハァハァ息切らすMCどこで見たことあんだよ」と攻撃の材料にされてしまいます。そのKENも後半はややトーンダウン。後攻だけにその勢いのまま完遂しきれれば、といった感じでバトルが終了しました。
そんなハードなバトルでしたが、やや僅差ではあるもののNAIKA MCの勝利。13章の優勝はNAIKA MCとなりました。戦極での強さをまた見せつけた結果ですね。
戦極13章は色々なバックボーンを持ったMCが多数集まりました。
世代を越えた戦いや無名MCの快進撃、さらにはアイドルの奮闘など、今回も色々な名場面の詰まった大会だったと思います。まだチェックしていない方は是非ご覧になってはいかがでしょうか。
※ 東京よりやや北
ビートとなった楽曲より引用。原曲では「東京よりやや西」と横浜のことが唄われている。
※ ゴールドマイク
例年のUMBの優勝賞品であることから、優勝の暗喩。
※ DreamBoy
KEN THE 390の主宰するレーベル。
※ 罵倒だろうが戦極だろうが
罵倒、戦極ともにMCバトルの大会名と掛けている。
※ O-EAST
渋谷O-EAST。本大会の会場。