FEIDAWAN v.s. ふぁんく
戦極MC BATTLE 第12章 FEIDAWAN v.s. ふぁんく
今回は戦極12章からこちらの一戦を紹介します。FEIDAWAN対ふぁんく、というありそうで無かった組み合わせです。
[FEIDAWAN]
久しぶりだなふぁんく 覚えてるか? 3on3
オマエに3人抜きされたこと忘れてねぇぞ オイ
6年越しのリベンジ
オマエを揺らすぜ ここが震源地
元気を奪う
オマエのように受けねぇかもしれないが
熱くさせるぜ
[ふぁんく]
いつかのFEIDAWAN調子はどうだ?
俺は言葉尻のストーカー
噛んだら離れないクロコダイル
その執念深さはシュトロハイム
Yo ジョジョの話 俺との実力差が徐々に
離れてるのが わかってるかよ
頭の中 乗っかってるとリズムの刻みがよ
[FEIDAWAN]
Ei yo コイツはストーカーじゃない
ギャグのブローカー 嘘はやめろや
ぶっちぎるぜオマエの首元
ど根性ガエル ここでピョンと変えちまうぜ
大東京を巻き込む 再登場
発光ダイオードみてぇに光る
俺はチェーンが無くてもブリンブリン
マイクはAVALANCHEじゃ
[ふぁんく]
仮面をかぶるのはたくさんだ
今から俺がギャグ漫画
俺はいつでも一人
オマエは俺に当たって日和り
そして食べたいなぁ 焼き鳥
俺こそが言葉尻のストーカー
概要
8小節3本
ビート: JAY-Z / 99 Problems
勝者: FEIDAWAN
解説
戦極MC BATTLE 第12章 FEIDAWAN v.s. ふぁんく
今回は戦極12章からこちらの一戦を紹介します。岡山対大阪、どちらもキャリアの長いベテラン同士のマッチアップです。
試合が始まってまず専攻はFEIDAWAN。両者の過去の対戦である3on3 MC BATTLE2009大阪のことに言及します。言葉通り「6年越しのリベンジ」を演出しているわけですね。
「オマエのように受けねぇかもしれないが 熱くさせるぜ」と締めくくり、双方のキャラクターを対比させます。
そして後攻ふぁんく。こちらはいつもの通りライミングライミングで攻勢をかけていきます。これがもう巧い巧い。これぞふぁんくといった感じです。
最近気づいたことすが、このふぁんくというMC、尋常ならざるスキルを持つことはもちろんなのですが、誰も聞いたことのないフレッシュな押韻を常にやり続けているかというと意外とそうでもないのです。
例えばこのバトルでも「ジョジョ」「徐々に」など、非常に単調な、また見方によっては陳腐なライミングも散見されることがわかりますね。
ただし、それでも試合を通して非常にスキルフルなrapをしているように感じるのは、1バースの全体をひとまとまりとして見た時に構成の巧さや決して単調ではないビートアプローチなど、むしろライミング以外の部分が非常に卓越しているからこそなのだと思います。
例えば、先ほどあげた「ジョジョ」の例で言えば、これが小節の最後での押韻であればその陳腐さも目についてしまったと思います。しかし今回のケースでは、前のラインを受けての説明と、続く「離れてるのが わかってるかよ」から始まる拍に合わせたビートアプローチへの前置き、という位置付けの配置になっていて、全体でみた時にそれほど目立たず、展開が変わる合間のラインとしてクッションの役目を果たすべく出てきたものなのだと思います。
こうやってひとつひとつ分析してみると、ふぁんくの強さは決してライミング一辺倒ではなく、フローやリズム、アンサーのレバレッジなど、恐ろしく柔軟な適応力を持った内容を毎度展開していることがわかったりして脱帽です。
実際はオーディエンスの耳や脳ががついていけずに判定負けしてしまった、なんてことも一度や二度ではなさそうです。
長く脱線してしまいましたがバトルの後半、2バース目です。
先攻のFEIDAWAN。「ギャグのブローカー」とふぁんくを直接的に中傷しつつ、語気を強めたシリアスな印象で両者の対比を強調させます。
ご存知の通りFEIDAのほうも中々のライミング巧者であり、「大東京」の辺りから最後までは意味も通った無理のない押韻で長年のキャリアが伊達ではないことを感じさせます。
最後の「俺はチェーンが無くてもブリンブリン」「マイクはAVALANCHEじゃ」の部分はこの試合の中でもけっこうなパンチラインですね。
そしてラストのふぁんく。「たくさんだ」「ギャグ漫画」など、あまり手垢のついてないライミングが出てくるところは非常にふぁんくらしいですが、内容的には「そして食べたいなぁ 焼き鳥」など、ライミングを継続しつつも攻撃的なFEIDAに対してこちらは勝負を真っ向から受けずにヒラヒラとかわしにかかるような内容になっています。
また、最後の最後では「胃が腐っとんじゃ」から、本バトルの冒頭に出したワードである「言葉尻のストーカー」で締めるというものすごくキレイな着地も見せています。(もし会場で見てたらたぶん私はスルーしてたでしょうが^^;)
さてこの一戦。総じてみると、バトルの色付けのために双方キャラの違いを必要以上に強調しつつ展開された一戦のようにも感じますね。
ふぁんくのほうはいつも以上に前傾姿勢なFEIDAを頑ななまでにかわしつつ、よりユーモラスな展開へ運ぼうとしているようでそうした攻防やその対比も本試合の見どころの一つではないかと思います。
そんなバトルでしたが、結果はFEIDAWANの勝利。今回のふぁんくも個人的には非常に好みでしたが、確かに対話の流れでいくとFEIDAWANの方が核心をつく内容になっていたと思います。
しかしFEIDAWANももう10年近いキャリアをもつことになりますが、そうしたMCがまだ第一線で活躍してることが嬉しいですね。
※ 3on3
3on3 MC BATTLE 2009 大阪大会のこと。
※ 紅桜 TOYSTAR FEIDAWAN
いずれも岡山のMC。2009大会で「チーム岡山」として組んでいた。
※ シュトロハイム
漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の登場人物。
※ ジョジョ
漫画『ジョジョの奇妙な冒険』。
※ ど根性ガエル
漫画『ど根性ガエル』。
※ AVALANCHE
ブリンブリンな宝飾品を扱うHipHopジュエリーブランド。
※ 『ギャグまんが日和』
日本の漫画作品。
※ 千鳥の大吾 「胃が腐っとんじゃ」
日本のお笑い芸人とそのネタ。